レンズの話をしていきましょう。
今回のお題は「焦点距離と画角」です。
僕の愛用しているレンズに AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED というレンズがあります。
このレンズの焦点距離ですが、なぜ切りよく 100 mm ではなく 105 mm なのか。
疑問に思ったことはありませんか?僕はあります!^^
結論から言ってしまうと、おそらくですが、焦点距離というのは得られる画角によって設定されているからではないでしょうか。
今回はその仮説を検証するため、単純な計算だけを用いて調べてみました。
焦点距離が f (mm) のときの画角を考えてみましょう。
35mm フルサイズの対角長は、調べてみたところ 43.2 mm だそうなので、画角(全角)θ は次のように計算できます。
$$2・\rm{f}\tan(\theta/2) = 43.2$$
$$∴ \theta=2\tan^{-1}(21.6/\rm{f})$$
さて、ここで基準となる焦点距離として f = 50 mm を設定します。
このとき画角は、上式に代入することで θ ≒ 46.7 ° ということがわかります。
一方、問題となっていた f = 105 mm のときの画角は、同様に θ ≒ 23.3 ° と計算することができます。
この2つの画角を比べてみると、105 mm は 50 mm のほぼぴったり半分になっていることがわかります。
やはりこの考え方でおおよそ説明ができそうです。
さらに話を発展させるために次の表を作りました。
f [mm] | θ [deg] | θ / θ(f=50) [a.u.] |
20 | 94.4 | 2.0 |
24 | 84.0 | 1.8 |
28 | 75.3 | 1.6 |
35 | 63.4 | 1.4 |
40 | 56.7 | 1.2 |
50 | 46.7 | 1.0 |
65 | 36.8 | 0.8 |
85 | 28.5 | 0.6 |
105 | 23.3 | 0.5 |
135 | 18.2 | 0.4 |
一番左の列は、各メーカーから出ている代表的な焦点距離、
真ん中の列は、上述の式で導いた画角(全角)、
一番右の列は、50 mm の画角を基準として何倍か、を示しています。
一番右の列を見れば、とてもきれいに割り付けされていることがわかります。
この結果からも、やはり焦点距離は画角基準で決められているのではと言えそうです。
さいごにおまけ。
何もわざわざ計算式を使わなくても、各レンズの公表されている仕様値のなかに画角も書いてあるのだから、その数値を使えばよかったのではと考えた方もいらっしゃるかもしれません。
実は私もそう思ってメーカーの仕様値は見に行ったのですが、同じ焦点距離だったとしても、メーカーによって、あるいは同じメーカーでもレンズが違うと画角が異なるということがわかりました。
理由は定かではありませんが、たとえば歪曲収差なども考慮した値が書いてあるのかもしれません。
それに、焦点距離 50 mm の単焦点レンズといっても、あくまでそれは公称値であって、実際の設計値は 50 mm ではなく 51.6 mm というのも割と有名な話ですし。
(詳細は下記リンクより)
ニッコール千夜一夜物語 - 第四十九夜 | Enjoyニコン | ニコンイメージング
第四十九夜は、大口径標準レンズのお話を致します。今夜はニッコール-S Auto 55mm F1.2の設計者の思いや、開発秘話を紐解きましょう。
もしかしたら、メーカーによってもこのあたりの考え方は違うのかもしれません。
たまにレンズの比較テストをしている記事を見ると、画角が違うなと気づくこともありますし。
ちなみに画角の試験をする際は、ピント位置が無限遠の風景で比較した方がいいと思います。
(接写するとフォーカシング機構で焦点距離が変わるレンズがイマドキほとんどですし、そもそもレンズの長さも違うので)
ところで、このブログではしばしばこの「ニッコール千夜一夜物語」を引用していますが、ニコンの実際の設計者の方がかなりマニアックな話を書いていて、個人的にオススメのコンテンツです。
僕は好きで結構読んでいます。
さらにオススメなのがこちらのサイト。
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ここは本当にすごいですよ。読みごたえバツグンです。
とても勉強になりました。
というわけで、今回もまた意外と長くなってしまいました。
本当はもうちょっとウダウダ言わずにサッと簡潔に書きたいのですが、どうも苦手で…。
次回の話も未定です。
いつも通り思いついたことがあればまた書こうと思います。
ではでは。