これからのカメラと写真について

NIKON Z 7, PENTAX Super-Takumar 55mm F1.8 (前期型).

斜陽のカメラ

 僕たちの愛すべき "写真を撮るしかできないカメラ" というやつは、でも残念なことに少しずつだけど歴史からその姿を消そうとしている。たぶん今後どれだけ写真を撮るという機能が進化していったとしても、それは変わらないだろうと個人的には思う。この先 10 年、20 年経った時、手に入るカメラの選択肢って果たしてどれくらい残ってるかな。まだカメラ自体が無くなってるとまでは思わないけど、それでも趣味として買えるものに限ればぐっと絞られてるはずだ。

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デジカメブームの頃の人たちはどこに消えた?

 こういう話をすると決まって「誰が悪い」とか「こうしていれば」とかって言いだす人もいるけど、僕はあまりそうは思わない。
 時代を遡ればデジカメ全盛期と言われる西暦 2000 年頃は爆発的に売れていたわけだけど、じゃあそこでカメラを買っていた人たちはどこに消えてしまったの?というと、実はどこかへ行ってしまったわけじゃなく、今も相変わらずスマホのカメラでたくさん写真を撮っている。(むしろ写真を撮るということ自体は歴史的にも今が一番活発に行われているのかもしれない。)
 結局これは何かを間違えたとかそういう話じゃなくて、 ただ単に "写真が撮りたいだけの人" と "カメラで良い写真が撮りたい人" の棲み分けがはっきりしたというだけのことだと思うんだ。この二人は写真が撮りたいという点では同じだけど、やりたいことは決定的に違う。だから当時はどちらも写真を撮るためにデジカメを買っていたけど、今はカメラで写真が撮りたい後者だけが買っている。単純にそれだけの話だと思う。みんなスマホ片手に生活している世の中じゃ、スマホカメラ以上に写真が撮れるカメラなんてない。だからどれだけミラーレスが高性能になったとしても、それで写真を撮りたいと思う人の比率が変わることはこの先ずっとないと思う。現状がそれを証明してる。

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コンデジは...なんて悠長なことを言ってる場合じゃない

 この界隈にいるとよく「コンデジはスマホに市場を食われた」ってフレーズを耳にするんだけど、でもこれ、実はそんな悠長なことを言ってる場合じゃなくて、今やコンデジどころか一眼のエントリークラスまで枯らし尽くすところまで来てる。実際、ここのところ一桁万円台のカメラって新機種どころかディスコンが進んでいるし、付け加えるならここ数年発表されたカメラはほとんどがミドルレンジ〜ハイエンドモデルだ。「カメラで写真を撮ること自体を楽しみたい」に流入する人がそれほど多くない以上、将来ユーザーの窓口としての役割を勘案したとしても、 "薄利多売" は今後のカメラ市場ではもう成立しないのかもしれない。
 それにスマホ写真はソフト・ハードの両面でまだまだ進化していくと思う。最もよく見る写真のサイズって当面はスマホ画面が制約になるだろうから、その範囲なら大口径ボケ・広角パース・望遠圧縮なんてすぐにでも普通の人には見分けがつかないレベルになりそうだ。そうなればますますカメラがほしいって人は減っていくんだろうな。考えれば考えるほど写真機にとってはきびしい環境だ。

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一方で、映像そのものの需要はむしろ増えている

 スマホとその周辺の情報通信技術の発達によって、僕たちが情報を得る媒介は "文字・記号" からより情報密度の高い "映像(画像・動画)" へとシフトが進んでいる。ニュースサイト・ネット通販・SNS 等、画像や動画が付くのは当たり前だし、動画・音楽・コミック等の配信サービスも広く利用されるようになった。こうした映像に対する需要を考えれば、仕事用カメラとしては当面は安心できる気がする。それで各社、スチールもムービー(シネマ)も、という方向に開発の舵を切っているのかもしれない。
 あとの問題は、近い将来シネマカメラとスチルカメラの境界線が無くなってきた時に、シネマカメラのメーカーも含めてどれくらいの数が生き残れるかどうかだと思う。そこで席に座れなかったメーカーはいよいよカメラから撤退ということになるのかなあ。(個人的にはカメラのビジネスはここ以外に市場があるんじゃないかなとも考えていて、なのでここで頑張っていくかどうかはメーカーによって判断が分かれそうだなとも思ったり。)

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これからのカメラと写真

 カメラそのものが無くなるというのはしばらくは大丈夫だろうけど、でも僕たちが求めてる "趣味で写真を撮るためのカメラ" ってのはこれからどんどん選択肢が狭まっていくだろうと思う。そのうち、「各メーカーの信者間でカメラの悪口を言い合ってるのを見ていられるだけまだ幸せだった」みたいに思う日が来るのかもしれない。
 果たしてその時に写真の価値って今と変わらないものでありつづけるだろうか。僕は同じということはありえないと思う。記録媒体がフィルムからデジタルになって、スマホで気軽に写真が撮れるようになって、その間にも写真の価値は絶えず変わり続けてきた。僕たちにはカメラの未来を変えるような力はないけれど、それでも "カメラで写真を撮るということ" について考え続けることくらいはできるはずだ。僕たちが撮りたいこれからの写真は、きっとその先に生まれるものだと思う。これまでもそうだったように。そしてそれはこれまで以上に大事なことのはずだ。

 理屈でわかっていても年を追うごとにカメラが減っていくのはやはり寂しいんだけど、だからこそこれまで以上にカメラで写真を撮るということを大事にしていきたい。そんなことを今は考えてる。

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 ...というわけで、今回は 6 月 1 日が "写真の日" だったということもあり、その日に因んで自分なりにカメラと写真についてあれこれと考えてみました。ここまで拙い文章を読んでいただき、本当にありがとうございます。ダラダラと書いてしまいましたが、自分が今の段階で考えられたことはほぼ詰め込むことができたと思います。これが正解ってことでは決してないので、またよろしければ皆さんのご意見も聞いてみたいです。

 というわけで今回はここまで。また次の記事でお会いしましょう。ではでは。