レンズ雑録

レンズ雑録 #8 「うちの標準単焦点で打線組んだ」

全国1億3千万人の標準単焦点愛好家の皆さん、こんにちは。

これって誰しも経験あると思うのですが、標準単焦点ってなんかつい似たようなのを何本も買っちゃうんですよね。わかりますわかります。標準と言うだけあって、いわばレンズメーカー各社にとっても花形レンズ。過去から現在に至るまで、それこそ数えきれないくらいのレンズが世に生み出されてきました。時代によってもメーカーによっても設計の思想が異なるので、当然レンズそれぞれの個性もまた違ったものになります。そこがどうしようもなくおもしろいんですよね。わかりますわかります。やっぱ標準単焦点しか勝たん。

まあだいたい標準単焦点なんてなんぼあってもいいですからね。僕も気がついた時には家の防湿庫が標準レンズでいっぱいになっていました。ガハハ。…というわけで今回はいい機会なので、わが家のレンズの紹介も兼ねて標準単焦点で打線を組んでみました。ちょっと何言ってるかわからないよって方、安心してください。僕もよくわかってません。まあ打線組んだっていうのは古の時代のテンプレ紹介文みたいなものです。ちなみに僕のなかで標準域というと 35mm 換算で 40~65mm かなって感覚なので、その範囲の中から今回は選んでいます。



1番 (右) NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

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これが標準単焦点のニュー・スタンダード

一番打者と言われたらもう絶対にこれ!ってくらいにこれ。この投稿を書くにあたって事前に打順をあーでもないこーでもない考えたわけだけど、これだけは秒で決まって最後まで変わらなかった。このレンズ最大の特長はなんと言っても打率の高さ。いわゆる抜けのいい描写で、どんな球種が来ても必ず捉えてヒットにしてくれる。機動力も兼ね備えているから、例えば「今日行く先で何が撮れるかわからない」って時には最適な一本。描写・開放F値・サイズ・ AF ・価格、全てのバランスが高次元に纏まっている。Z マウントのスタンダードと言うべきマストバイのレンズ。

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2番 (投) NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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シャープでいて柔らかい、規格外の二刀流

これまでの常識を覆した正真正銘の規格外。何を差し置いてでもまず語らねばならないのが、このレンズが生み出す立体感について。三次元方向に澱みも綻びもなくあまりに自然に繋がっているため、ピント面はとてつもなく解像しているのにそれを “面” として感じることがない。存在感の密度をもって主題を認識せしめるという唯一無二の表現力を持つ。画像処理で大抵のことはどうにかなると言われるこの時代に、 "レンズでなければ出来ない表現がある" ということをこれほど見事に証明してみせたレンズは他にない。パッと見では望遠大三元と見紛うような出で立ちだが、それをリーズナブルと言えるだけの価値がこのレンズにはある。なお、晴天下ではシャッタースピードが容易に上限に達するため、購入の際には併せて ND フィルタも揃えておくが吉。

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3番 (二) Makro-Planar T* 2/50 ZF.2

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テンションコードで奏でる気品のレンズ

何でも卒なくこなす技巧派。無限遠からハーフマクロまで安定してカバーする守備範囲の広さが特長。ピント面性能は Planar の名に恥じぬ平坦性と均質性で、現代レンズと比べても決して見劣りしない。ボケの輪郭は多少強いもののそれ以外の収差で崩れたりしないので、ガチャつきはしてもザワザワしない。テンションコードのような心地よい緊張感がある。接写時の凛としてたおやかな描写も大きな魅力。くわえてレンズの見た目まで可愛いのだからもう言うことなし。気品のあるレンズです。巷で絶賛されているのもさもありなん。中古市場に出てもすぐに履けてしまうため、なかなか手に入らないのが唯一の難点。ちなみに、後継の Milvus 2/50M はおそらく構成枚数こそ同じものの設計変更がなされているらしく、作例を見る限りでは描写がかなり大人しくなっている印象。メジャーコードでは物足りないって人にはこっちがオススメ。

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4番 (一) AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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魔力の名は三次元的ハイファイ

四番打者はどうしたってやっぱりこのレンズ。芯を捉えた時の飛距離は他の追随を許さない。最大の特長はその圧倒的ボケ味。シャープネス至上主義が蔓延る世の中で、徒にピント面の解像力を追い求めたりせず、三次元的ボケ描写にステータスを全振りしたようなロマン溢れるレンズ。正直言って守備範囲も特別広いわけではないし、フルスイングで凡退なんてこともよくある。それでも、光と溶け合いながら輪郭を滲ませていくその描写には、ひとたび目にした者を惹きつけて離さない魔性の魅力が宿っている。寄るほどに描写が柔らかく同時に収差で崩れていく傾向があるが、適度に絞り込んでバランスを取るか、それとも構わずフルスイングしてみるかは自分次第。好き嫌いは分かれるが、記録より記憶に残る名選手だ。

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5番 (捕) APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical (E-mount)

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狂気すら感じる色収差への執念

淡々と仕事をこなす職人気質のレンズ。アポクロマートの名を冠するのは決して伊達ではなく、フォーカシングの際に拡大表示で見ていても、最初笑っちゃうくらい色収差が見えてこない。たぶんこの設計者は軸上色収差に故郷の村を滅ぼされたか何かに違いない。だいたいレンズ構成図の異常部分分散ガラスの数からして狂気じみたものを感じる。色収差に限らずその他の収差もほぼフラットに抑え込まれてるのでは、と思わせるくらい無味無臭の描写。当然ボケもフラットタイプ。いわゆる目が良くなったと感じるレンズです。F2.8 で絞りが円形になるという遊び心もニクい。AF は無いけどフォーカスリングのトルク感が最高なあたり、さすがよくわかってらっしゃる。

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6番 (遊) AI Nikkor 50mm f/1.4S

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水彩画のススメ

フィルム時代の設計ではあるが、多少の変更点はありつつもつい最近まで新品購入することができた息の長いレンズ。歴戦の雄。開放では水彩画のような湿度のベールを纏った写りと適度な背景のザワつき感が得られるが、兄弟レンズの AI Nikkor 50mm f/1.2S ほど暴れたりしない。一段絞ると急にコントラストが上がって、ボケもちょうどいい具合にガチャガチャする。クラシカルな描写でありながら打率も高いというのが最大の特長。そういう写真が撮りたいって人にはうってつけのレンズ。玉ボケが七角形になるというのも好きな人にはたまらない魅力のひとつ。初めてのオールドレンズにオススメする一本。

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7番 (左) Nikkor-S・C Auto 50mm F1.4

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ニッコール・ノスタルジア

Nikkor-S Auto の 50mm F1.4 シリーズでは最終形となったレンズ。ニコンの標準単焦点の歴史が垣間見える往年の名選手。古いレンズなので経年劣化や個体差の可能性もあるが、AI Nikkor 50mm f/1.4S よりは多少ふわっと写るし、歪曲収差も大きめ。とはいえ使ってみると必要十分な画質で、寄りでもそれ程崩れる感じもしない。ボケもちょうどいい具合のザワつきで、クラシックなレンズとしてはとても扱いやすい部類のレンズ。見た目もかわいいし、金属鏡筒の冷たさと重量感も心地いい。わが家では主にフィルム機用のレンズとして活躍中。

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8番 (中) Planar T* 1.4/50 ZF.2

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綺麗な薔薇には棘がある

発売は 2009 年。実は設計としては比較的新しいレンズ。とはいえ Classic シリーズにカテゴライズされるだけあって、レンズ構成は往年の Planar 型(50mm F1.4 のダブルガウス型としては典型的な構成)。描写もしっかりとクラシカル。開放では全体に霞がかかったような柔らかさで、ボケはかなり暴れやすい。ZEISS =良いレンズってイメージの人も多いかもしれないけど、実際はそうとは限らなくて、とくにこいつは結構なじゃじゃ馬。ボケに強烈に収差が乗るので、しっかり背景を整理しないと痛い目にあう。使いこなしが求められる気難しいレンズだが、ハマった時の描写には独特の世界観がある。ちなみに見た目はバツグンにかわいい。個人的には ZF.2 が一番好き。

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9番 (三) Super-Takumar 55mm F1.8 (前期型)

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フレアはともだち こわくないよ

最後は手持ちのレンズのなかで、ある意味最も華があるこのレンズ。オールドレンズと言えば必ず名前があがるくらい有名なレンズで、市場にも相当数出回っているためすぐ見つかるし安価に購入できる。Super-Takumar にも幾度かの改良による変遷があるが、これはその中でも最初期の型。特長はなんと言っても盛大に出るフレアとゴースト。当然これを活かさない手はないから、積極的に太陽の方向にレンズを向けるべし。ただし油断すると意図しない写真にまで後で見返してみるとゴーストが…なんてことが頻発するので注意が必要。フレアとゴーストが欲しいって人は必ず単層コートの型を選ぶように。意外とコントラストよく写るレンズ(とくに中央部)でもある。ボケのざわざわ感もちょうどいい具合なので、打率自体はけっこう高い。これも初めてのオールドレンズにはオススメの一本。ちなみに盛大に歪曲収差が出るので、真っ直ぐなものを撮る時は後処理が必須。

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これだけ撮れる写真が違うわけだから、やっぱり全部必要なレンズということですね。うん。大丈夫です。僕は幸せです。

実は今回紹介することができなかったレンズも何個かあるのですが、まあ今後も着々と数は増えていくだろうと思うので、焦らずまた切りのいいところでアップデートしていこうかと思います。

ちなみに直接の元ネタはこちらです。最&高なのでぜひご一読を。

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