ここ何日かコートが必要ないくらい暖かい。2 月もまだ半分残っているというのに春を感じる暖かさだ。関東地方では春一番が吹いたらしい。梅の木も街のあちこちで枝の節々に花を咲かせている。僕の心のなかにある冬というやつは 12 月でも 1 月でもなくラスボスの 2 月がいちばん凍えるイメージがあって、だからこれからまた一段と冷え込んでくるんだろうなと身構えていたところだったから肩透かしをくらった気分だ。
毎朝子どもと保育園まで歩いていく道すがら決まって近所にある中学校の前を通るのだけど、そこには道路側から見通せる場所に石組みの小さな池がある。夏には学校で飼育しているらしい 1 匹の亀が水面スレスレの高さのアスファルトのブロックのうえで甲羅干しをしていたりして、それをなんとなく通りがけ眺めるのが僕の日課になっているのだけど、冬になるとすぐ凍ってしまうその池の水が今年はまだ一度しか凍ったところを見ていない。暖かくなるのがはやかったというよりは、今年はわかりやすく例年にくらべて暖かい冬だった。
でも暖かいのは僕にとってはすごくすごくいいことだ。だんだん冬というものに僕の身体が対応できなくなっているから。小さい頃から冬になると指のささくれがひどいのだけど、歳を重ねるごとに唇が荒れてきたり、足が痒くなってきたり、耳の付け根がひび割れたり、手の甲にいつの間にかかさぶたができていたり。冬に適応できない部位がどんどん増えていくからスキンケアが欠かせない。これが老いか。これまでは漠然とやってくるだけのものだったのに、いまや目に見える形で身体の色んなところに表れ始めている。かなしい。
だからもう僕にとっての冬はただ過ぎていくだけのものではなくて、なんとかして乗り越えていくものに変わった。これからは越冬だ。