わが子の小さな手のひらがぺちぺちと僕の頬を打つ。文字通りたたき起されているのだけど、うらはらに心地よい。いつも朝から元気印の彼は今日も僕より早起きだ。すこし前にまた歳の数が1つ大きくなって、最近ことあるごとに自分が何歳かをたずねてくる。いいことをして褒められればその数が増えたりするし、わるいことをして叱られれば数が減ったりする。でも次の日になればリセットだ。おおよそそんなレギュレーションで彼の年齢は運用されている。 対する僕はこれだけ歳を重ねても朝はよわよわだ。子どもに急かされながら、半ば這いずるような格好でリビングにたどり着く。部屋の明かりとテレビだけをなんとかつけて、すぐに糸が切れたように ...